【完結】橘さんは殺された。
⑩エピローグ
「橘さん……ずっと辛かったんだよね。あの時、気付いてあげられなくてごめん」
橘さんのことをもし、少しでも気が付いてあげられていたら、少しは何か変わったのだろうかと思った。
今更後悔しても仕方がないけれど、それでも役目を果たせたことを後悔はしていない。
橘さんの無念を晴らすために刑事になったのは、俺だ。
俺はその役目を果たせたことで、少しホッとしている。
「橘さん……安らかに眠ってね」
俺はいつでも、橘さんの味方だから。
「俺……君のヒーローになれたかな」
きっとヒーローになれたと信じよう。 橘さんのこれからのためにーーー。
「刑事さん……?」
お墓参りを終えて帰ろうとした時、誰かに声をかけられた。
「……橘さん」
それは橘さんの母親だった。
「刑事さん、来てくださったんですね。ありがとうございます。……きっとあの子も、喜んでいると思います」
橘さんの母親はそう伝えると、涙ながらに俺に頭を下げた。
「本当にありがとうございます。浅羽を捕まえてくださって……。本当に、ありがとうございます」
「……事件解決が遅くなってしまい、誠に申し訳ありません」
俺も彼女の母親に謝罪をしたが、母親は「いえ、あの子の無念は晴らされました。……もう何も、思い残すことはありません」と語った。
「……俺これから毎年、橘さんに会いに来ます」
「はい、会ってあげてください。……きっとあの子も、喜ぶと思います」
「はい。……では、失礼します」
そして俺は約束通り、毎年橘さんの命日に、橘さんに会いに行った。
橘さんはこれからも俺の心の中に、いつまでも存在し続けるーーー。
【THE END】