【完結】橘さんは殺された。


「そうだ。橘智夏の身体からは、確かに犯人の者と思われる体液が残っていた。……恐らく殺される前にレイプ被害に遭ったと思われる。制服の横に橘智夏の下着が落ちていたし、そこにも犯人の体液が付着していた。……が、その体液はデータベースに合致する人物はいなかった」

 橘さんは、殺される前にレイプ被害に遭っていた。橘さんが暴行を受けたと聞いていたが、まさかそこまで残酷だったなんて……。

「防犯カメラもなかったんですよね?」

「ああ、なかった。あんな林の中だから、目撃者もいなかったしな」

 だからこそ、犯人の手がかりになるようなものは何もなかった。
 だからこの事件は、未解決のまま終わったんだ。

「橘さんは……事件の前、どこに行こうとしていたんですか?」

「事件を担当した刑事の話だと、バイトの帰りだったそうだ。 親に迎えにくるように頼もうともしたらしいが、親に連絡が付かずに一人で帰ることにしたと言っていたそうだ」

「バイトの帰り?」

 いや。橘さんは確か記憶によると、バイトをしてなかったはずだ。……なのにバイトの帰りって、どういうことだ?
 
「あの……俺の記憶だと、橘さんはバイトなんてしてなかったはずです」
 
「え?……確かバイト帰りだったと、橘智夏の両親から話を聞いていたらしいが?」

「え?」

 どういうことだ……?橘さんはどこかでバイトをしていたのか?
 そんな話、聞いたことはなかったが……。
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