リスタート
『実は……僕自身、唯さんの担当を最後にこの仕事をやめようと思っていたんだ』

そう言って儚げに笑うニコラ。
突然の告白に驚いているわたしに、ニコラは続けて──

『これまでにいろんな人をサポートしてきたけれど、そのすべてが上手くいったわけじゃないんだ。
もちろん、立ち直って人生を歩んでいる人もいる。
だけど、なかには絶望して命を絶った人もいたんだ。
この仕事が僕に向いているのかわからなくなっていたとき、唯さんを担当をすることになったんです』

『唯さんは前を向いて一歩を踏み出している。
唯さんのおかげで僕も頑張ろうと思えたんだ。
僕の方こそ唯さんと出会えてよかったよ。ありがとう』

そう言ってニコラは微笑んだ。

(もう、ニコラとは会えないんだ……)

そう思うと、胸が締めつけられる思いがした。

(わたし、ニコラのことが……)

ニコラがパチンと指を鳴らす。

ニコラの体が消える直前──

『後悔のない人生を歩んでくださいね。
唯さんがマンガ家になれると信じてますよ』

その言葉を最後にニコラの姿は消えた。
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