辺境に追いやられた伯爵令嬢は冷徹な王子に溺愛される
なぜならば、どれが正しいのか、私自身がわからないからだ。
ただ、一つ、私のお腹に新しい命が宿ったことだけが真実だ。

あの夜が最後になるとわかっていたし、彼がベッドから出て行ったとき、私は起きていた。
もう二度と会うことはないのかもしれない。そう感じ、一人で朝まで泣いたのは昨日のことのようにも感じる。

帰ってくることのないアレックスを待つ日々が、やがて諦めに変わったころ、体調がすぐれなくなり、新しい命が宿っていることに気づいた。

結婚も子供も諦めていた私にとって、それはとても嬉しいことだった。ずっと一人で生きていくと思っていたが、この子が生きがいになるし、アレックスの子供ということが嬉しかった。

森に入れるようになったことで、町の人々との距離も近くなり、一人で妊娠した私に町の人たちは優しかった。
頻繁に食料を届けてくれたり、気にかけてくれる友人もできた。
それだけで私は幸せだった。
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