辺境に追いやられた伯爵令嬢は冷徹な王子に溺愛される
「うまー!」
目をキラキラとさせて、その味を楽しむアンネは、興奮気味に声を上げた。

「ロゼ、ありがとう。本当に珍しいものね」
「そうなの、王都から最近入ってきたものらしくて」
王都という言葉にビクっとしてしまう。商人ならばアレックスではないのか。
今だそんなことを思ってしまう自分が嫌になる。

そんな私の気持ちが分かったのか、ロゼは少し悲しそうな表情を浮かべた。
アレックスではないことは分かっているのだが、どうしても心の隅でもしかしたらと思ってしまうのは仕方がないことだ。

生きているのか、それだけを知りたいだけ。こうして平和をもたらしてくれたことに感謝しているのだから。

私は心の中で、それだけだと自分に言い聞かせた。
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