【11/19番外編追加しました】辺境に追いやられた伯爵令嬢は冷徹な王子に溺愛される
「そうでしたか。私はフェリーネと申します」
サバティーニという名も、伯爵という家も、何もかもすべて今の私にはない。ただのフェリーネという平民であり、薬屋だ。

「フェリーネはここに一人で?」
「ええ」
いろいろ詮索されるのが嫌で、私はキッチンへと向かい、話題を変える。
「かなり奥に行かれたのですか? ひどい毒でしたが……この森のことをご存じなかったんですよね?」
あの腕の色からして、かなり森の奥に行かない限り、あれほどの状態にはならない。この森の奥がだんだんと瘴気に浸食されていることを知っているこの町の人間なら、入ることのないはずの場所だ。

「ああ。この辺りに貴重な宝石があると聞いて、それを探しに」
「……そうですか」

その言葉に、私は一気に緊張してしまう。
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