【11/19番外編追加しました】辺境に追いやられた伯爵令嬢は冷徹な王子に溺愛される
「どうしよう……」

アンネの濡れてしまった服を着替えさせながら、私の頭の中をその言葉がめぐる。
予定より早くに戻るとは聞いていたが、こんなにも早いとは思っていなかった。
それに、まさかアンネを助けてもらうことになるなんて。
なるべく殿下とアンネの接触は避けたかったのに、あろうことか抱き上げられて仲睦まじい姿を見ることになろうとは。

その姿を思い出すと、なぜか切なくなり涙が零れそうになる。
二年前、彼が戻ってこなかったとき、一人でアンネを育てると決めた。父親は遠くのお空に行ったと。
理解していないアンネに語り掛けながら、自分にそう言い聞かせていた。
しかし、初めて父親に抱かれたアンネは、やはりよく似ていて、彼に似た瞳がキラキラしていた。

感慨にふけっていた私だったが、不意に聞こえた声に意識を戻した。
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