【11/19番外編追加しました】辺境に追いやられた伯爵令嬢は冷徹な王子に溺愛される
何かをしなければ気が紛れなくて、ここに来てから始めたばかりの毛糸でアンネの手袋を編むも、集中できない。

窓の外を見れば、今にも消えそうな細い月が浮かんでいた。
毛糸を置き、私はそこへ吸い込まれるように窓際に立つと、なぜか涙が零れ落ちる。どれだけ義母たちに虐げられても、泣くことはなかった。
そしてアンネを産んでからも一人でしっかりしなければと思い、無我夢中だった。

しかし、殿下の姿を見てしまって以来、私の涙腺はどうかしてしまったのだろうか。

月がどんどんぼやけていくのを止めたくて、慌てて指で拭ったその時、扉がノックされた。

「どなたですか?」
カーラか誰かが何かを忘れたのかもしれない。こんな泣き顔は見られたくなくて、私は扉を開けることなく問いかける。

「開けてくれ」
その低く響くテノールに私の心臓は止まるかと思った。数秒息を止めていたのだろう。

何も言うことができず、ドアノブに伸ばしていた手を止めた。
「フェリーネ。頼む」
私だけに向けられた殿下のその声に、私はただ立ち尽くしていた。

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