【11/19番外編追加しました】辺境に追いやられた伯爵令嬢は冷徹な王子に溺愛される
第三章
「フェリーネ、お願いだ」
今の殿下の立場ならば無理やり開けさせることも、転移でこの部屋に入ることもできるはずだ。
しかし、それをせずに私などに頼む彼を拒否できるわけがない。

なんとか、涙を隠したくて俯いたまま扉を開ければ、スルリと殿下が入ってきた。

「泣いていたのか?」

顔を見ていないのに言い当てられたことに、私は驚いて無意識に顔を上げていた。

「俺のせいだな。すまない」
その言葉の意味がわからず、私はただどうしていいのかわからず立ち尽くしていた。

しばらく部屋の入り口で私たちは向かい合っていた。何を話すべきなのかもわからないし、彼がこんなお忍びでこうして私のところに来るなど想像もしていなかった。

「あの……。どのようなご用向きでしょうか? 用事があれば私が参りました」
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