【11/19番外編追加しました】辺境に追いやられた伯爵令嬢は冷徹な王子に溺愛される
もしかしたら、万に一つ、今日の兵の治療のことなど違う要件かもしれない。
そう思い私がなんとか声を出すと、殿下は私の顔を見たまま何も言わない。

「殿下?」
たまらず問いかければ、静かに口を開いた。
「アンネは俺の子だな?」
その単刀直入な問いに、私は一瞬返事が遅れる。ここできちんと伝えるべきなのか、もしかしたらそれによってアンネが取り上げられてしまうのではないか。
そんな不安が襲う。それにこの人には婚約者がいるのだ。あの、ソフィーに私の宝物のアンネを渡すなど考えたくもない。

「違います」
静かに答えた私に、殿下のまとう空気が冷たくなった気がした。
「じゃあ、父親は?」

「それは、はやり病で」

咄嗟に出た言い訳だったが、殿下は少し言葉に詰まったように言いよどむ。

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