ひねくれた純愛 アイリスとカーライル
俺は窓の外の景色を、眺める振りをして、
窓ガラスに写る教授の動向を
観察していた。
今日の仕事の資料準備で、徹夜したのだろう。
眼鏡を外して、目頭を押さえた。
彼女の漆黒の髪。
その黒は、象牙色の肌の白さを際立たせ、
暖房の熱は、耳と頬をピンクに
染めていた。
また、眼鏡をかけたが・・・
目を閉じていた。
相当に疲れているのがわかる。
数分した時だった。
顔ががっくりと下がった。
「あ・・・」
そのまま、ずりずりと彼女の体重が、俺の腕にかかってくる。
眼鏡が鼻下までずり下がり、
唇が少し開いている。
「教授・・・」
俺は声をかけたが、
彼女は熟睡をしているのは
明らかだ。
危ないので、眼鏡を外してやった。
眠っている彼女は、幼い少女のように見える。
髪の毛から、柔らかな石鹸の香りがする。
タアアアアーーーーンン
列車がカーブを曲がるので、
大きく揺れた。
そのまま、教授の体は
前のめりに頭ごと、俺の座っている膝に落ちて来た。