ひねくれた純愛 アイリスとカーライル
<ゆすり事件>
俺はトイレから出て、
たばこを吸いに、建物の裏の雑木林に向かった。
昨今は喫煙に対して厳しい。
敷地内での喫煙は禁止だ。
まったくガキでないが、
隠れて一服する立場に、追いやられている。
建物の裏手は雑木林で、裏門がある。
3人の人物が逆光でシルエットになって、裏門に立っているのに気が付いた。
一人は女・・教授だ。
もう2人は知らない男。
一人は帽子をかぶっている。
俺の現場で鍛えた勘は鋭い。
2対1で、やばい感じになっている。
俺は彼らに見つからないように、
声が聞こえる近い場所に移動した。
教授の声は小さい。
が、もう一人の男の声は
いらだちを見せて、かん高かった。
「トーマスは古美術収集で
有名だったのよ」
その口調で、俺はすぐに気が付いた。
こいつはトーマス・ハミルトンの
事実上の元女房なのか?
「かなりの金額がつくものを、
海外から持ち出しているのに、
それをどう処分したのよっ」
それにトーマスの本の印税だって
入っているでしょっ」
もう一人の帽子男が猫なで声で
「ハミルトン夫人、
君は教授に対して恩義を感じているはずだ。
教授に拾われなかったら、
難民キャンプで野垂れ死にか
売春して、生きるしかなかったからな」
教授はいつものように、うつむき加減で黙っていた。
帽子男はその様子に満足したのか、言葉を続けた。
「それがこの国で高等教育まで受けさせてもらい、
今の地位も与えてくれただろう?」
俺はトイレから出て、
たばこを吸いに、建物の裏の雑木林に向かった。
昨今は喫煙に対して厳しい。
敷地内での喫煙は禁止だ。
まったくガキでないが、
隠れて一服する立場に、追いやられている。
建物の裏手は雑木林で、裏門がある。
3人の人物が逆光でシルエットになって、裏門に立っているのに気が付いた。
一人は女・・教授だ。
もう2人は知らない男。
一人は帽子をかぶっている。
俺の現場で鍛えた勘は鋭い。
2対1で、やばい感じになっている。
俺は彼らに見つからないように、
声が聞こえる近い場所に移動した。
教授の声は小さい。
が、もう一人の男の声は
いらだちを見せて、かん高かった。
「トーマスは古美術収集で
有名だったのよ」
その口調で、俺はすぐに気が付いた。
こいつはトーマス・ハミルトンの
事実上の元女房なのか?
「かなりの金額がつくものを、
海外から持ち出しているのに、
それをどう処分したのよっ」
それにトーマスの本の印税だって
入っているでしょっ」
もう一人の帽子男が猫なで声で
「ハミルトン夫人、
君は教授に対して恩義を感じているはずだ。
教授に拾われなかったら、
難民キャンプで野垂れ死にか
売春して、生きるしかなかったからな」
教授はいつものように、うつむき加減で黙っていた。
帽子男はその様子に満足したのか、言葉を続けた。
「それがこの国で高等教育まで受けさせてもらい、
今の地位も与えてくれただろう?」