ひねくれた純愛 アイリスとカーライル
俺はコーヒーポットと毛布を片手に、部屋に戻った。
教授はソファーにまだ座り込んで
いたので、毛布を渡した。
「教授、コーヒーをどうぞ、
体を温めたほうがいい」
教授はほうっと息を吐き、
毛布をかぶって座りなおした。
「ありがとう・・」
教授は伏し目がちに、
両手で手を温めるようにカップを持った。
俺も教授の隣に座り、コーヒーを飲んだ。
静かで、少し息がつける時間の共有。
この人の笑顔を見たことがない。
教授の横顔を見て、
俺はふっと思った。
常に緊張を強いられる生活・・
困難と忍耐
そうしなくては、生き抜いてこられなかったのだろう。
クモの巣にからめられた
小さな蝶のように、
油断をすれば捕食される。
「教授はもう少し休んでいて
ください。
俺の方でできる事はやりますから」
教授はうなずいた。
いや、声を出す元気もないと
いうように、毛布に埋もれていた。