ひねくれた純愛 アイリスとカーライル

セクハラ問題

<セクハラの件>
数日後、
俺は教授に呼び出されたので、
机の前に立っていた。

教授の目は、俺を見ようとしない。
デスクの書類に向いているし、
早口だ。

「その監査の件では、礼を言いたいと思っている。
それ以外にも、君には迷惑を
かけた。

それから、先日の列車内のセクハラの件だが・・」

教授は、初めて視線を俺に合わせた。
「はい」
俺は返事をした。

教授が手を差し出した。
「携帯を出しなさい、
こちらで確認して消去するから」

俺は平然と答えた。
「拒否します。
これは私物です。
プライバシーの侵害ですよね」

上司には素直に従わない・・・
俺の流儀だ。

しかし、この答えは教授の中では、とっくに想定内なのだろう。
「君の要求はなんだ?・・
金かそれとも?」

俺は考える振りをした。
あの、アイリスの香りと
象牙のように滑らかな肌に触れたい欲望が、つきあがった。

「金でもなく・・・
この部屋には、監視カメラはないですよね」

突然、教授が顔をしかめて
立ち上がった。
「では、なんだ!?」

その声は何かを警戒する、
怯えが含まれている。
片手が机の引き出しにかかった。
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