いっそ、君が欲しいと言えたなら~冷徹御曹司は政略妻を深く激しく愛したい~
ただのお礼なのだから自惚れてはいけない。自分の心に強く言い聞かせているというのに……。
それから一カ月、泰章は火曜日には必ず史織を誘いにきた。日中はいつも通りケーキを買い、帰りに待ち伏せをしているパターンだ。
二回目までは予定があるかと聞いてくれたが、三回目になるともう聞いてはくれなくなっていた。
彼の中で、火曜日の夜は自分のために空けてくれているとものと決まっているかのよう。
もともとそんなに入るような予定もない。買い物だって別の曜日に行けばいいだけ。そうやって、史織も意識的に火曜日を空けていた気がする。
食事をして、話をして、そのままアパートへ送ってくれる。信じられない夜が毎週続いた。
最初は「ナンパです」と言いつつ、きっとお礼のつもりなのだろうと思うこともできたが、そんな理由で自分を騙せたのも三度目くらいまで。
四度目になると、さすがにどうして毎週誘ってくれるのだろうと不安になる。
――食事を終えて、今夜は少しベイエリアをドライブしてからアパートへ送ってくれた。
車の中からベイエリアの夜景を見たのなんか初めてで、まるでデートみたいだと口にはできない想いで胸がいっぱいになった。
心が浮き立ってしまっていたのだと思う。それだからアパートに車が到着して「また来週、待ち伏せするから」と言われ、「どうして毎週誘ってくれるんですか」と聞いてしまったのだ。
「一緒にいて楽しくなる女性は何度でも誘いたくなる。それに対して史織さんも応じてくれているから、俺は嬉しいんだけど。それを不思議に思うなら、断らないのはどうして?」
「それは……」
ずるい。これは困ってしまう質問だ。
どうして誘うのと聞くなら、どうしてついてくるの。いやなら断ればいいのに。彼がそう言っている気がして顔が見られない。
答えは決まっている。断りたくないし、史織も泰章といるのが楽しいし、……誘われると、嬉しい。
でも、そんなことまで言ってしまってもいいのだろうか。誘われていい気になっているとは思われないだろうか。
困った。なんて返したらいいかわからない。こんな時、どんな返事をするのが正解なのだろう。史織には恋愛経験というものがなさすぎてよくわからない。
それから一カ月、泰章は火曜日には必ず史織を誘いにきた。日中はいつも通りケーキを買い、帰りに待ち伏せをしているパターンだ。
二回目までは予定があるかと聞いてくれたが、三回目になるともう聞いてはくれなくなっていた。
彼の中で、火曜日の夜は自分のために空けてくれているとものと決まっているかのよう。
もともとそんなに入るような予定もない。買い物だって別の曜日に行けばいいだけ。そうやって、史織も意識的に火曜日を空けていた気がする。
食事をして、話をして、そのままアパートへ送ってくれる。信じられない夜が毎週続いた。
最初は「ナンパです」と言いつつ、きっとお礼のつもりなのだろうと思うこともできたが、そんな理由で自分を騙せたのも三度目くらいまで。
四度目になると、さすがにどうして毎週誘ってくれるのだろうと不安になる。
――食事を終えて、今夜は少しベイエリアをドライブしてからアパートへ送ってくれた。
車の中からベイエリアの夜景を見たのなんか初めてで、まるでデートみたいだと口にはできない想いで胸がいっぱいになった。
心が浮き立ってしまっていたのだと思う。それだからアパートに車が到着して「また来週、待ち伏せするから」と言われ、「どうして毎週誘ってくれるんですか」と聞いてしまったのだ。
「一緒にいて楽しくなる女性は何度でも誘いたくなる。それに対して史織さんも応じてくれているから、俺は嬉しいんだけど。それを不思議に思うなら、断らないのはどうして?」
「それは……」
ずるい。これは困ってしまう質問だ。
どうして誘うのと聞くなら、どうしてついてくるの。いやなら断ればいいのに。彼がそう言っている気がして顔が見られない。
答えは決まっている。断りたくないし、史織も泰章といるのが楽しいし、……誘われると、嬉しい。
でも、そんなことまで言ってしまってもいいのだろうか。誘われていい気になっているとは思われないだろうか。
困った。なんて返したらいいかわからない。こんな時、どんな返事をするのが正解なのだろう。史織には恋愛経験というものがなさすぎてよくわからない。