いっそ、君が欲しいと言えたなら~冷徹御曹司は政略妻を深く激しく愛したい~
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高級ホテルのロイヤルスイートルーム。そんな部屋に宿泊できるなんて考えたこともない。
だから、これは夢なのかもしれない。
眠れないベッドの中で、史織はひと晩中ぼんやりとそんなことを考えていた。
夢なら、眠れば覚める。それなら眠ろう。こんな夢は早く終わらせたい。
目が覚めたら史織はいつもの1Kのアパートにいて、朝の身支度をして職場へ向かう。同僚たちが迎えてくれて、店長が「今日の子たちも美人ぞろいだ!」と嬉しそうにケーキを持ってきて、オーナーに「今日は火曜日だね~」と意味ありげに言われて、國吉に「高いケーキ薦めてよ~」と笑われて、由真に「史織さんって、どういう男がタイプなんですか? 火曜日に来る王子みたいなイケメンですか?」と答えにくい質問をされて……。
お客様にいろんなケーキをお勧めして、かわいくラッピングした時には喜んでもらえて、「ありがとう」と言ってもらえる。
そんな一日が、待っている……。
はずだったのに。
史織が目覚めたのは、高級ホテルのロイヤルスイートルーム、大きなベッドの中だった。
そろりと起き上がり、広いベッドルームを見回す。カーテンの隙間から明るい光が室内に伸びている。朝陽とは違う気がして時間が気になった。
「……夢じゃなかったんだ」
眠れなくて長いことうつらうつらとしていた記憶がよみがえってくる。眠れたのは、明け方だろうか。
上かけが肌を滑り、自分が全裸であることを認識する。昨夜泰章に脱がされたドレスやインナーのビスチェなどが床に散乱しているのが目に入ると、急に恥ずかしくなって目をそらした。
着替えの服が気になって再度床に目を向ける。泰章が着ていたテールコートはベッドのわきに寄せられている。彼が仕事に行くと言って着替えていたのは普通のスーツだった。
まさか史織だけドレスを着て帰れというのでは……。アームソファの上に折りたたまれた服とブライズルームに置いていたはずの史織のショルダーバッグを見つけ、ホッと安堵した。
洋服の上に史織のスマホがのせられている。バッグの中に入れていたはずなので、出したとすれば泰章だろう。
ベッドから出てスマホを手に取るが、全裸なのが落ち着かなくてまたベッドにもぐり込む。
高級ホテルのロイヤルスイートルーム。そんな部屋に宿泊できるなんて考えたこともない。
だから、これは夢なのかもしれない。
眠れないベッドの中で、史織はひと晩中ぼんやりとそんなことを考えていた。
夢なら、眠れば覚める。それなら眠ろう。こんな夢は早く終わらせたい。
目が覚めたら史織はいつもの1Kのアパートにいて、朝の身支度をして職場へ向かう。同僚たちが迎えてくれて、店長が「今日の子たちも美人ぞろいだ!」と嬉しそうにケーキを持ってきて、オーナーに「今日は火曜日だね~」と意味ありげに言われて、國吉に「高いケーキ薦めてよ~」と笑われて、由真に「史織さんって、どういう男がタイプなんですか? 火曜日に来る王子みたいなイケメンですか?」と答えにくい質問をされて……。
お客様にいろんなケーキをお勧めして、かわいくラッピングした時には喜んでもらえて、「ありがとう」と言ってもらえる。
そんな一日が、待っている……。
はずだったのに。
史織が目覚めたのは、高級ホテルのロイヤルスイートルーム、大きなベッドの中だった。
そろりと起き上がり、広いベッドルームを見回す。カーテンの隙間から明るい光が室内に伸びている。朝陽とは違う気がして時間が気になった。
「……夢じゃなかったんだ」
眠れなくて長いことうつらうつらとしていた記憶がよみがえってくる。眠れたのは、明け方だろうか。
上かけが肌を滑り、自分が全裸であることを認識する。昨夜泰章に脱がされたドレスやインナーのビスチェなどが床に散乱しているのが目に入ると、急に恥ずかしくなって目をそらした。
着替えの服が気になって再度床に目を向ける。泰章が着ていたテールコートはベッドのわきに寄せられている。彼が仕事に行くと言って着替えていたのは普通のスーツだった。
まさか史織だけドレスを着て帰れというのでは……。アームソファの上に折りたたまれた服とブライズルームに置いていたはずの史織のショルダーバッグを見つけ、ホッと安堵した。
洋服の上に史織のスマホがのせられている。バッグの中に入れていたはずなので、出したとすれば泰章だろう。
ベッドから出てスマホを手に取るが、全裸なのが落ち着かなくてまたベッドにもぐり込む。