いっそ、君が欲しいと言えたなら~冷徹御曹司は政略妻を深く激しく愛したい~
彼の胸に顔をつけてしまいそうになって横を向くが、それでもスーツ越しに硬い胸板を感じてドキドキする。
一八〇センチ以上はある背が高い人なので、こうしていると包み込まれているみたいだ。
「……泰章さんの匂いがする」
うっとりとするあまり、つい口走ってしまった。自分の呟きが恥ずかしくなった時、パッと彼が離れた。
「今日はそんなに外出しなかったんだが、汗臭いか?」
「ち、違います、そういう意味ではっ……!」
「新婚の妻に汗臭いといやな顔をされるのも考えものだ。着替えよう」
「すみません、違うんです、違うんですっ。泰章さんのスーツのいい匂いがするなって思って!」
必死になる史織を歯牙にもかけず、泰章はスーツの上着を脱ぎ、着替えをするべく自分の服が入ったクローゼットを開ける。
「おまえ、俺のスーツの匂いが好きなのか?」
「は、はい……好きです……」
だんだん声が小さくなっていく。プシューッと音をさせて蒸発してしまいそうなほど顔が熱い。
本当は泰章から漂うなんともいえない上品な男らしい香りが好きなのだが、そんなことを言ったらわけがわからないと気持ち悪がられてしまいそうで、スーツの香りにかこつける。
ウエストコートを脱いだ泰章は、それを史織の方に差し出した。
「それなら、スーツをかけてくれるか」
「あ、はいっ」
慌てて泰章に駆け寄りウエストコートを受け取る。脱いだばかりのせいか彼の体温がまだ残っていて、鼓動が速くなってきた。
「いつもは光恵さんにやってもらうが、今日からはおまえがスーツの手入れをしてくれ。やりかたがわからなければ光恵さんに聞くといい」
「はい、わかりました」
自然と明るい笑顔が浮かぶ。泰章のためにできることがあるのが嬉しい。思わず「ふふっ」と笑って両手で持っていたウエストコートに頬擦りをしてしまった。
(って、なにやってるのっ、わたしっ)
ちょっと調子にのりすぎた。泰章を見ると彼はジッと史織を凝視している。
(やっぱりおかしな女だと思われてるんじゃ……)
史織はベッドの上に放られていたスーツの上着を掴み、メインルームへ走った。
「ちゃんとしたお手入れの仕方、聞いておきます」
内線電話を取りながらチラッと泰明を盗み見る。壁が邪魔してはっきりとは見えなかったが、肩を震わせて笑っている……ように見えた。
一八〇センチ以上はある背が高い人なので、こうしていると包み込まれているみたいだ。
「……泰章さんの匂いがする」
うっとりとするあまり、つい口走ってしまった。自分の呟きが恥ずかしくなった時、パッと彼が離れた。
「今日はそんなに外出しなかったんだが、汗臭いか?」
「ち、違います、そういう意味ではっ……!」
「新婚の妻に汗臭いといやな顔をされるのも考えものだ。着替えよう」
「すみません、違うんです、違うんですっ。泰章さんのスーツのいい匂いがするなって思って!」
必死になる史織を歯牙にもかけず、泰章はスーツの上着を脱ぎ、着替えをするべく自分の服が入ったクローゼットを開ける。
「おまえ、俺のスーツの匂いが好きなのか?」
「は、はい……好きです……」
だんだん声が小さくなっていく。プシューッと音をさせて蒸発してしまいそうなほど顔が熱い。
本当は泰章から漂うなんともいえない上品な男らしい香りが好きなのだが、そんなことを言ったらわけがわからないと気持ち悪がられてしまいそうで、スーツの香りにかこつける。
ウエストコートを脱いだ泰章は、それを史織の方に差し出した。
「それなら、スーツをかけてくれるか」
「あ、はいっ」
慌てて泰章に駆け寄りウエストコートを受け取る。脱いだばかりのせいか彼の体温がまだ残っていて、鼓動が速くなってきた。
「いつもは光恵さんにやってもらうが、今日からはおまえがスーツの手入れをしてくれ。やりかたがわからなければ光恵さんに聞くといい」
「はい、わかりました」
自然と明るい笑顔が浮かぶ。泰章のためにできることがあるのが嬉しい。思わず「ふふっ」と笑って両手で持っていたウエストコートに頬擦りをしてしまった。
(って、なにやってるのっ、わたしっ)
ちょっと調子にのりすぎた。泰章を見ると彼はジッと史織を凝視している。
(やっぱりおかしな女だと思われてるんじゃ……)
史織はベッドの上に放られていたスーツの上着を掴み、メインルームへ走った。
「ちゃんとしたお手入れの仕方、聞いておきます」
内線電話を取りながらチラッと泰明を盗み見る。壁が邪魔してはっきりとは見えなかったが、肩を震わせて笑っている……ように見えた。