桜の花が咲く頃に、僕はまた君に恋をする。
prologue
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青く澄んだ空に、暖かい春の風が桜の花を撫でる4月。
目を閉じると、太陽の光と共に桜の甘い香りが鼻をくすぐった。
「.......春希(はるき)、今日もいい天気だね。」
そう声をかける私の目の前には、『星名家之墓』と書かれたひとつのお墓。
「あれからもう8年かぁ.......あのね、私と汐(しお)今日婚姻届出しに行ったんだ。汐はもっと早く出したかったみたいだけど、私がどうしてもこの日がいいって言ったの。」
ふと隣を見ると、さっきまで水を汲みに行っていた汐は、私と同じようにお墓の前にしゃがんでいる。
私の視線に気づいたのかこちらを振り向いて、目が合うと柔らかい笑みを綻ばせた。
「いまでもずっと覚えてるよ、今日は春希が私の世界に“色”をつけてくれた日だから。」
「あの時の春希、どんな気持ちで私と話してたのかな.......8年経っても分かんないや。」
.......ねぇ、春希。
桜の花が咲くあの日、君は何を想いながら私に『好き』だと伝えてくれたのかな。
何を、願いながら.......______。
「.......会いたいよ、春希。」
今はもういない、大好きな君へ送る言葉。
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