桜の花が咲く頃に、僕はまた君に恋をする。
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「へぇ〜星奈くんかぁ。なんかすごいね、少女漫画みたい」


入学式も終わり、徐々にグループができ始めて少し賑やかな雰囲気の教室。

目の前に座って感心するように話すなずなに、机に伏せたまま気の抜けた返事を返した。


2回目の告白?のあと、どう反応すればいいのか分からずただただ顔を赤くさせていると、それを見兼ねたように入学式準備のチャイムが鳴って、結局答えは出せないまま。


後回しにするのは申し訳ない気もするけど、まだ星奈くんのこと何も知らないし.......


どう返事するのが正解なんだろう。


「でも確かに、なんで彗に告白したんだろねぇ。会ったことないんでしょ?」

「多分.......」


ふと星奈くんの方を見ると、仲良くなった5人グループの中でおしゃべりを楽しんでいる様子。

ちょっと変わった人なのかなって思ってたけど、意外と普通だ。

普通に明るくて優しくて、他の男の子より少しかっこいい。


でも、何となく。何となくだけど。




星奈くんは.......、




「わっやば!私生徒会に挨拶しに行かなきゃいけないんだった!」

「あー、成績トップ3人は生徒会勧められるんだっけ。なずな、入るの?」

「うん!やれることはやってみたいなっておもってさ。今日一緒に帰れなくてごめんっ」

「いいよいいよ、頑張ってね!」


急いで教室を出ていったなずなを見送った後も、しばらく黒板を眺めたままぼーっとしていた。

気づくとさっきまでグループで話していた星奈くんも教室からいなくなっていて、私もそろそろ帰ろうかな、とスクールバッグを片手にスマホをいじる。

通知を開くと、ちょうど30分前にお父さんから「今日は宿直だから帰れない」と連絡が来ていた。


「(また夜ご飯1人かー.......)」


さすがに今日は自炊しようかなぁ、この前もコンビニのお弁当買ってサボっちゃったし。

そんなことを考えながら歩いていると、たまたま通りかかった音楽室にピアノを見つけた。


「うわ、懐かし.......まだ弾けるかなぁ」


中2くらいまではピアノ教室に通っていたけど、辞めてから2年間くらいは弾いてなかった気がする。

今度こっそり入って弾いてみようかな、と荷物を持ち直してその場を離れた。
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