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約束

急いでドライヤーとワックスを使って,
髪の毛を直し終わったときには時計の針はいつもより10分も遅い時間を示していて、
慌てて采花さんに昼食は用意出来なかったことを言うと急いで家を出た。

「行ってきますー!!」

いつもは走って行かない通学路も今日走らないといけないぐらい時間がない。

「ヤバイ!!あと、3分しかない!」

携帯の液晶パネルで時間を確認するとさらに走るスピードを上げる。
駅の改札を入ったところで丁度電車が入ってきたので、
どうやらあたしは学校に遅刻しないで済みそう。
電車の中に入った途端に閉まったドアはあたしを乗せて、すぐに動き出した。

ふと、乗客に目を移すと、見慣れた顔ぶれがいたことに気付く。

「おはよ、富貴」

座席に座って、携帯を弄っている姿を見るとやっぱり今どきの高校生だなぁ、と思ってしまう。

「今日はいつもよりギリギリだったねぇー」

朝から普通通りのテンションと変わらないのが富貴の良いところでもある。

「うん。昨日ちゃんと髪の毛を乾かさなかったから、寝癖が酷くなっちゃった」

小さく溜息を付いていると、学校の最寄り駅の名前が放送されていた。

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