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富貴と一緒に電車を降りて、階段のほうに向かって歩いていると、

「おはよ、椎野」

後ろから昨日聞いたばかりの落ち着いた低めの声に名前を呼ばれ、
振り向いて確認してみるとやっぱり司馬要だった。
相手はあたしのことを知っているみたいだけど、
あたしは昨日知り合ったばかりでよくも知らない人だから多少の抵抗感というものがあり、
ちょっと馴れ馴れしいんじゃない！？というのが本音。

でも、挨拶ぐらいはしないとね。

「おはよぉ」

昨日見たときは袴だったから制服姿をみると、
あの袴独特の引き締まりがなくなって柔らかに見える。

それと同時に二つの視線が気になって仕方ない。
一つはあたしの隣から来る富貴のもので、もう一つはというと司馬要の隣にいる人物から来るものだ。

背が少し低めで、自然に近い茶色い色素を持った柔らかそうな髪の毛に、
女の子っぽい顔立ちをしている。
はっきり言って司馬要と対照的な感じ男子がさっきからあたしのほうに向けてくる視線が痛い。
明らかに感じる視線に目を合わせる勇気はなく、気付かない振りをしていた。
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