Trust

あたしがまだ中学2年生だった頃。
夏の始まりを告げようとしている雨の降り続ける季節の中、多くの大切なものを無くし続けた。
無くし続けて、最終的に自分の感情さえもなくなればよかったなんて、あんなに大切でしかた無かったピアノが家から運ばれていくのを見ながら、自嘲的にまるで他人事のように思ったことを今もはっきりと思い出せる。

この頃から人を愛することに恐れを抱き始めた。
どうせ愛したとしてもその人もいつか離れてしまう、愛しても仕方ない。愛する意味なんて分からなかった、そんなふうに心の底から思って、一人孤独という殻に閉じこもっていた。
でも、それは強がりで、本当はこの殻を誰かに破ってもらいたかったんだ。それは、今もおんなじ。

一歩踏み出したいけど、その一歩が踏み出せない。
だから、誰かを待っているの。その一歩を踏み出せる人が来るのを。


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