Trust
「別に彼氏候補とかじゃないし、なんでもないただの知り合いだよ。名前だって、昨日知ったばっかりだし。」

実際そうなのだ。
昨日、今日で知り合ったばかりの人に恋愛感情を持てと言われても、
どんな人か分からないんだから、無理に決まっている。

先のほうを歩いている司馬要を眺めていると、何やら隣にいた友達とじゃれあっている。
隣の友達が何か言ってくるのに対して剥きになっているという感じ。
そして、そのまま校門を抜けて北校舎の昇降口に入っていった。

この学校は普通科と理数科と芸術科に分かれているため校舎も専攻科目によって入学時から決められている。
普通科は南校舎、理数科は北校舎、芸術科は西校舎となっている。
だから、校舎が違う生徒とは会うことなんてない。部活や委員会をやっている生徒だったら会うこともあるけど、
何もやっていないあたしは本当に他の校舎の人と交流なんてものは無いのかもしれない。
司馬要と知り合ったのも偶然に近いと思う。

そんなことを思いながら、あたしも自分のクラスがある南校舎の方へと足を進めた。
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