Trust
「でも……世良はそんなに綺麗なのに彼氏の一人も作らないなんて変だよっ!!噂が本当だって皆に思われちゃうよォ」

泣きそうな声を出しながら、一生懸命あたしを説得している姿はまるで、自分のことのようで本当に自分のことを思ってくれているなぁ、なんて実感してしまう。
人のことで熱くなるところは彼女のよいところであって、欠点でもある。
それが原因で彼女はつい最近彼氏と別れたばかりなのだ。
彼氏からしてみれば、彼女の行為は「重く、うざい」らしい。
それだけ人のことを大切にしているということなのに、その彼氏には富貴の気持ちは伝わらなかったみたいだ。
ちなみにその彼氏の言葉を聞いた途端あたしはそのバカ男の左頬に手形が残ったぐらい思いっきり平手打ちを食らわしてやった。
富貴の傷ついた気持ちに比べればそんなのかすり傷程度に決まっている。

「世良、聞いてる?」
富貴の声にハッとして我に返った。
そうだ!バカ男に平手打ちをしたことは富貴には秘密だったんだ。
「聞いてるよ。噂が本当だって思われたくないんでしょ?」
「当たり前じゃん!世良は悔しくないの?自分のことが本当でもないこと好き勝手気言われてること」
富貴は真っ赤な顔をしてさらに声を荒げる。
その言葉にあたしは真っ直ぐに富貴を見据えた。
「あたしは、そんなことよりも本当のコトを知っていて信じていてくれている人がいればそれで十分だよ」
そうハッキリと言った。

うわべだけのような付き合いよりも、あたしのことを信じ信頼できる人がいれば、それで良いんだ。
好きな人もそう・・・
どんなに人に言われようが、あたしのコトだけを信じて思ってくれる人が良い。

「だから、気にしてなんかないから平気だよ」
ふっと、口元に笑みを浮かべて富貴に笑いかけた。
「ならいいけど・・・」
まだ納得のいかないような表情をしていたけれど、授業開始のチャイムが鳴ってしまったので、この話は強制終了という形になった。

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