Trust
夕方の5時を過ぎた頃そろそろ家に帰ろうかと思って、ピアノを弾く指を止めた。

窓の外は茜色を帯び、グランドピアノを照らしている。
サッカー部のホイッスルと、野球部の掛け声が時々耳に届く。
ピアノを弾いているときは、少しも気にならないが、こうして静かにしてみると色々な音が聞こえてくるんだと感じる。

ピアノにカバーを掛け、蓋を閉めた。
鍵は開けたままだから無視、無視。
部屋を出る直前に音楽室のすぐ下の弓道場に目をやってみる。
左側に的が設置されてあり、右側には数名の弓道部員だと思われる人たちが袴を着て、的に狙いを定めている。
そこには、さっき見たはずの姿は見当たらない。

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