クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
「……っち。わかった。今日の夜、戻る」

「本当ですか?」

 戻るという言葉が聞こえたために、ついティメルも珍しく声を張り上げてしまった。辞するという言葉が効いたのだろう。だが今、この主は夜、と言った。さて、夜とはどの時間帯を指すのか。

 それでもこの遅れてきた初恋をくすぶらせている主が、レーニスの元に戻るという発言をしただけでも進歩したものだ。褒めてあげたい、とティメルは思っていた。

「では、レーニス様にそうお伝えいたします」

「いや、レーニスには伝えるな」

「なぜ?」

「俺は、たまった仕事をするために屋敷に戻るのだ。彼女に会うためではない」
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