クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
 言い、ティメルから目を逸らすかのように手紙に視線を戻した。
 そうやって手紙を見てニヤニヤするくらいなら、素直に彼女に会いたいと言えばいいのにとティメルは思った。

 屋敷に戻ってきたティメルであるが、一度レーニスの元に顔を出そうと思っていた。デーセオが戻ってくることを伝えるためではない。確かに彼に手紙を届けた、ということを伝えるために。
 レーニスは今日もデーセオの執務室にいた。彼女は不在の主にかわって、書類の仕分けを行っている。そのようなことまでできるようになったことを、恐らくデーセオは知らないだろう。
 レーニスは根が真面目だ。あの執事のジョナサンの薀蓄にも付き合えるくらいの根強さと、そして気真面目さ。そこに使用人や民たちを想う優しさも溢れている。

「レーニス様。こちらにいらしたのですか」

「あら、ティメル。今日はこちらに戻ってきたのですね。飛竜の方は問題ないのですか?」
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