クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
 小さく息を吐くと、デーセオは逸る気持ちを押し込めて、寝室へと向かった。
 一目、顔を見るだけだ。と、そう自分に言い聞かせて。
 寝室の扉を開けると、廊下の柔らかい光がその隙間から部屋へと入り込む。それを遮るかのように、扉を閉めると、また奥の扉から寝室へと向かう。
 目が慣れてきたからか、暗闇でもどこに何があるかはわかる。そっと寝台に近づき、彼女の顔を見下ろすように寝台に腰をおろす。

 ――少し、ふっくらとしたか?

 あの日、肌を合わせた夜と比べると、肉付きが良くなったような気もする。頬が以前よりも丸くなったように見える。よくわからないのは、この部屋が薄暗いから。だから、それを確かめたくて、その頬に手を寄せそれに触れた。

「旦那様?」

 声をかけられその手を引こうとしたが、それができなかったのは先にレーニスに手を重ねられてしまったから。愛おしそうにその手を頬にすり寄せると。

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