クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
「ティメル」
 部屋を出ていこうとするとレーニスに呼び止められる。その隣でデーセオがさっさと出ていけという形相で睨んでいるため、できることならばこのタイミングで呼び止めて欲しくなかった、という思いがある。

「その、いろいろとありがとう」

「いえ。奥様のお役に立てて何よりです」
 ティメルが頭を下げ、再び頭をあげると、デーセオがしっしっと犬でも追い払うかのように手を振っていたため、ティメルは苦笑を浮かべながらその場を去った。

 やっと二人きりになれたデーセオであるが、可能であれば先ほどの続きをという欲はあった。だが、レーニスがニコニコと顔中に笑顔を浮かべながら。
「視察はいつもどのようにして行かれているのですか?」
 と聞いてくるものだから、先ほどまでの甘い空気は無い。デーセオも平静を装い。

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