クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
北の視察
 竜騎士部隊の中でもレーニスの評判はいい。彼女の人柄だけでなく、その祈りの効果も。そのような女性を妻として娶ることができたデーセオも機嫌がいい。だけど、なぜあのような女性が部隊長と結婚したんだろう、という部下たちの囁き声、いや囁きになっていないから、彼の耳にはもちろん届いている。
「なぜ」ってそれは彼女を金で買ったからだ。それ以外の理由は無い。

 だからってそれを堂々と胸を張って口にしたら、外道とか鬼畜とか人でなしとか、そう言った言葉を部下からかけられるのがわかりきっているし、自分でも彼女を金で手に入れたことをどこか恥じている部分もある。どうせなら、もっと別な出会い方をしたかった、という気持ちが今になって沸き起こっていた。



「レーニス。今日は北の集落へ視察に行く。ここは、地形のせいか、この領地の中でも作物の育ちが著しく悪い土地なのだ」
 それは、レーニスが飛竜舎へ足を運んでから三日後のことだった。
< 194 / 318 >

この作品をシェア

pagetop