クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
「怖いなら、しっかりとこれに捕まっていろ。お前のことは俺が支えているから安心しろ」

「あ、はい」
 レーニスは安心してその背をデーセオに預ける。レーニスからは見えないけれど、デーセオのその顔はだらしなくにやけていることだろう。この空の上では、デーセオがだらしない顔をしていても誰にも知られることはない、はず。まあ、知られたとしても飛竜くらいだろう。

 空の旅は快適だった。快適になるように、飛竜がいつもよりゆったりと羽ばたいてくれているのだ。それに気付いているのはデーセオだが、敢えて何も言わない。
 飛竜に乗って二十分後、北の集落についた。早馬で駆ければ三時間かかる距離。それだけフルヘルト領は広大なのだ。

「あー、飛竜だー」
 と言う子供たちの声が聞こえてきた。それを合図にしたかのように、集落の大人たちも空を見上げ、手を振っている。
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