クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
 そして夕食の場。
 デーセオもこのようにレーニスと共に食事をするようになって、幾日かが過ぎている。彼女に顔を見られても恥ずかしいとは思わなくなったし、レーニス自身もデーセオを怖がっている様子はない。
 彼女から怖がられるかもしれない、というのは、デーセオの杞憂だったということなのだが、恐らくデーセオ本人はそれにすら気付いていないのだろう。
 食事中にも関わらず、デーセオはじっと彼女の顔を見つめていたのかもしれない。レーニスがデーセオに気付いて、笑顔を向けてきた。ニコリ、と。

 その笑顔は反則だとデーセオは思う。
 何しろ彼女はデーセオにとっては、妻でありながら、天使なのだから。いや、女神。
 食事中でなかったら、両手で顔を覆って彼女から顔を背けたかった。だが、残念ながら今は食事中であり、両手にはナイフとフォークが握られている。顔を隠す手段がない。そのため、恐らく、彼の顔は真っ赤に染め上げられているはずだ。そして、それはジョナサンにもサンドラにも気づかれていて、彼らはその鉄仮面の下で笑っているのだ。

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