クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
「大事なこと、とは? お前から感謝の言葉はたくさんもらっているぞ」

 違います、とレーニスは首を横に振った。

「旦那様。その、愛しています。これからも私だけを愛してくださいますか?」

「なっ……」
 不意打ちである。ちょっと潤んだ瞳で、上目遣いで、天使というか女神からそんなことを言われてしまったら。
 デーセオは思わず自分の口元を手で押さえてしまった。それくらいの衝撃があった。嬉しすぎて言葉が出てこないし、この手の下の口元は今、盛大ににやけている。

「旦那様が私をお金で買ったことは、充分理解しております。ですが、その、共にいるうちに、そのように、思い始めてしまって……。ご迷惑とは思っているのですが」
 とうとうレーニスは両手で顔を覆ってしまった。もしかしたら、その手の平は涙で濡れているのかもしれない。

「迷惑なわけがあるか」
< 238 / 318 >

この作品をシェア

pagetop