クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
 もちろん、それに対応する権力と金を持っていれば、そんな甘い囁きにのることもなかっただろう。だが、今のフォッセ家は――。
 これは面白くなってきたぞ、とティメルは思った。デーセオの解呪のためにレーニスという元聖女候補を調べたときもそうだったが、他人の悪事を公にして、そいつの地位をどん底に突き落とすことが楽しいのだ。

「おい、ティメル。どうか、したのか?」

 ニタニタと笑みをこぼしているティメルが珍しかったのだろう。デーセオは不審者を見るような視線を投げつけてきた。

「いいえ、どうもしません。私は少しこちらに残って、いろいろと調べてからあちらに戻ります。デーセオ様はさっさと愛する奥様のところにお帰り下さいませ」

 相変わらずの減らず口だった。
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