クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
 本来、聖なる力は民たちに平等に与えられるものではないか、と。

 何よりも高い金を払って祈りを捧げて貰った金持ち達は、それが当たり前だと思って礼を口にしたことなどなかったのだ。
 些細なことかもしれない。だけど、彼女たちに気付きを与えるきっかけとしては十分なものだった。

 そして神殿に乗り込んだティメルが見つけ出した神官たちの悪事の数々、ではなく金の行方を示す証拠たち。彼は、それをこっそりと懐に忍ばせ、神殿を後にした。

 その日、サライト王国の船たちは撤収した。デーセオとレーニスが向こうの代表と交渉をしたからだ。黙って退けばそちらの要求に応えられるように努力する。だが、クレイデル王国に侵入を試みるようであれば、聖なる力で鉄槌を食らわせる、と。
 そんなことを言うのはデーセオの役目かと思いきや、レーニスが向こうの代表にそう突き付けた時には、隣にいたデーセオも驚いた。悪役が似合わない妻だと思っていたのに、そのときの彼女を思い出すと背筋がゾクゾクするらしい。どういう意味のゾクゾクかは聞かない方が無難というもの。

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