クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
「その、パエーズ卿がどうかされましたか?」
 レーニスは胸の内を悟られないように、笑顔を繕って尋ねた。返ってくる答えもなんとなくわかっているはずなのに。

「パエーズ卿がね、あなたのことを是非とも妻に娶りたいとおっしゃってくださったのよ。年は少し離れているかもしれないけれど、とてもいい話ではないかしら?」

「ええ、私にはとてももったいない話だと思っております」

「そうよねぇ、もったいないお話よね? ということは、お引き受けしてもよいということよね? このような素敵な話は滅多にないもの」
 ロイスは頬の隣で両手を合わせ、そして首を小さく傾げた。

「……はい」
 恐らくここで、レーニスが「いいえ」と答えても最終的には「はい」と答えるように仕向けられるのだ。ならば、最初から反抗せずにそれに従った方が賢明であると彼女はそう判断していた。

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