クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
 部屋に入った瞬間、体中の力が抜けてしまい扉に寄り掛かって下を向く。さらに重力にも負けて、その赤い双眸からは涙が溢れてきた。あまりにもの量のその涙に、鼻をつたって、鼻からも流れてきた。そのまま扉に寄り掛かりながら、腰を下ろす。

 聖なる力を感じない――。

 聖女様から放たれたその一言が、レーニスをどん底に突き落とすには充分だった。そうやって扉に寄り掛かって座って、足がしびれるくらいまで泣いた。あまりにも泣きすぎて、頭が痛くなってきた。
 別に聖女になりたかったわけではない。聖女候補になろうとも思っていたわけではない。他の人にはない聖なる力があったからそうなっただけ。
 でも、聖なる力があるなら人のために使いたいと、そう思っていた。だけどもう、それも叶わない、と。

 ふと、現実に引き戻された。このままではいけない、と。
 ぐしゃぐしゃになった顔のまま、レーニスはすっと立ち上がる。

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