クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
 こういった社交辞令にも慣れていないレーニスは、ありがとうございます、としか言えなかった。

「本来であれば、主が挨拶に伺うべきところを、私が代理で来てしまい申し訳ありません」

 いえ、とレーニスは答えた。彼女を買ったフルヘルト卿が気になるところだが、このティメルという男を見ている限りだと、なぜかあのパエーズ卿よりは数百倍もマシだと思えた。
 それからティメルは今後の予定について簡単に説明をした。それから、三日後に迎えに来る、と。
 肝心のフルヘルト卿こと、デーセオは領地でレーニスを迎え入れる準備をしている、という言葉もつけて。

「レーニス様。ここからフルヘルト領までは馬車で三日ほどかかります」

 途中、フェルゼン領、ホラント領で一泊し、その三日目の昼過ぎにはフルヘルト領に入るとのこと。フルヘルト領に入れば、デーセオの居城はすぐそこだと言う。

「長い旅になりますが、レーニス様のご負担にならないように配慮するつもりです。なんなりとお申し付けください」

 その日、ティメルはそう言って帰っていった。
 それからレーニスの周囲は騒がしくなり、忙しくなった。てっきりレーニスを追い出すための準備かと思いきや、それなりに嫁入りの物を持たせてくれるらしい。だが、たかが三日。準備できるものとは限られているが、それでも上等なドレスを数枚持たせてくれた。いつの間に準備をしていたのだろう、と思えてしまうそれ。

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