クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
「あの、ティメル……さん」

 レーニスがもう一度声をかけると、ティメルは柔らかい笑みを浮かべた。

「あの。私は、その、フルヘルト卿にお買い上げいただいた、ということでよろしいのでしょうか?」

 それを耳にしたティメルの目は点になった。かと思うと、目尻を下げて、大笑いをする。あまりにも笑いすぎて、その目尻から涙が溢れているのだろう。人差し指でそれをぬぐっていた。

「レーニス様は、ご自分の立場をよくわかっていらっしゃるのですね」

 笑いながらそれを口にしているティメルに、レーニスは冷たい視線を向けた。

「ああ、そう、睨まないでください。そのような意味ではありません。まさかあなたが、そのことを知っているとは思わなかったので」
 やっと落ち着いたティメルはその顔を引き締めた。

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