クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
 失われた聖なる力の取り戻し方はわからない。むしろ、なぜ自分に聖なる力が備わっていたかを知らない。だが聖女様の言葉を借りれば、神に選ばれたから。
 ならば今、その神に見捨てられた、ということか。

 神に見捨てられたレーニスは聖なる力を失い、聖女候補を解かれた。だから、今後はこの神殿にいることはできない。帰る場所はあると言ったらあるし、無いと言ったら無い。
 父の兄であるクエバは自分を受け入れてくれるだろうか。だが今はあの屋敷しか行くところはない。
 連絡もせずに戻ったら、彼は驚くだろうか。むしろがっかりするかもしれない。

 トントントン。と、部屋の扉をノックされる。こんな元聖女候補の部屋を訪れる風変わりな人は誰だろう、とレーニスは思いながら「はい」と返事をした。

「レーニス……」

 扉を開けると、今でも聖女候補であるラーナが慎重な面持ちで立っていた。

「ラーナ……」
 レーニスは彼女の名を口にする。レーニスを心配して、こうやってわざわざ部屋まで来てくれたのだろうか。

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