クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
「お初にお目にかかります。レーニス・フォッセです」
 レーニスは令嬢としての教育を受けていない。できるのは聖女としての挨拶だ。もしかして、非常識だったかという焦りもあったが、表情を隠しているその男は何も言わないし、表情を隠しているため彼の様子を読み取ることもできない。レーニスには一筋の変な汗が背中を伝うような感覚があった。

「遠いところ、よく来てくれた。急がせて悪いが、挙式は三日後だ」

「はい」

「詳しい話はそこのサンドラから聞いてくれ。もう、戻ってもいいぞ」

 サンドラというのは、恐らくレーニスをここまで案内してくれた先ほどの侍女だろう。

「はい、失礼します」

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