クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
 レーニスはその閉められた扉を、茫然と見つめることしかできなかった。
 だが、すぐさま我に返る。
 まずは荷物の整理。ここに来たときにも鞄一つでやって来た。私物と呼べるようなものは、無い。生活に必要なものは支給されていたからだ。
 それから、侍女頭のところへ行こうと思った。聖女候補で無くなった今、この神殿で侍女として働くことはできないだろうか、という相談。もちろん、あの屋敷に戻ってもいいのだが、戻るにしては急過ぎると思われたため。少し、ここで侍女としておいてもらって時間を稼ぎ、伯父であるクエバが受け入れてくれるのを待とう、と思っていた。

 侍女頭の部屋へと行くと、ジロリと睨まれてしまった。どうやらレーニスが聖女候補で無くなったという話は、知れ渡っているようだ。

「何か御用ですか。レーニス」

 今までは「レーニス様」と呼ばれていたのに、その「様」が無くなってしまった。

「あの。私をここの侍女として雇ってくださいませんか?」

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