クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
「無理です」
 侍女頭はレーニスを一瞥して答えた。
「聖なる力を失った元聖女候補を、この神殿に置いておくことはできません」
 彼女の声は冷たい。

「ですがっ」
 レーニスは、懇願しようとした。だが、それを続けられなかったのは、侍女頭のほうが、レーニスがそれを言うよりも先に口を開いたからだ。

「今日一日だけ、この隣の部屋を使いなさい。どうせ、聖女候補の部屋を追い出されたのでしょう?」

 なぜか彼女の鋭い視線の奥に灯る、温かな光を感じた。

「私は、何年もここにお仕えしておりますから、今回のようなことは初めてではありません。あなたのように、ここに侍女として残りたいと言った元聖女候補も何人かおります。ですが、ここに残ったところで、あなたに待っているのは不幸だけです」
 そして、ふっと目を細め。
「帰る家はあるのですか?」

< 9 / 318 >

この作品をシェア

pagetop