◆ラヴェンダー・ジュエルの瞳

[5]操縦

 それから食後のアイスティーを差し出したラヴェルは、同じ表情のまま同じ席に着いた。けれどあたしは外を見たいとそれを受け取り、右舷の窓に沿って並ぶベンチ式のチェストに独り腰掛けた。何処までも続く真っ青な空と、眼下の海のような緑に目を向ける。

 この飛行船は『半硬式』と言って、ゴンドラを吊り下げる部分や、機首から尾部まで通ずる骨格が金属で出来ている。他に軟式や硬式があるけれど……まぁその中間に当たるタイプだ。

 修理を頼まれた祖父に連れられて、訪ねた先で様々な飛行船を見てきたあたしでも、この稀少機は余りお見かけしたことがない。また何か異常事態が起こる前に、細部を頭に入れておかなくては、と早速心に決めた。

 それでもつい眼下に広がる美しい景色に目を奪われて、なかなか立ち上がれない自分が居た。祖父の直した飛行船に、お礼を兼ねて何度か一緒に乗船させてもらったことがあるけれど、もちろんこんなに長い滞在は初めてで、それも夜のフライトは小さい頃からの憧れだ! 今日は低空飛行でも雲はなさそうであるし……満天の星空を滑るなんて……ああ、どんなに素敵だろう!!


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