◆ラヴェンダー・ジュエルの瞳
──こんな奴と、二人きりじゃなければね……。
と、あたしは背中に感じた幽かな悪寒に、恐る恐る振り返った。
「ユーシィは、やっぱり何度も飛行船に乗ってるんでしょ?」
メチャメチャ近い真後ろに、片膝をチェストに乗せたラヴェルの顔があった。
「あ、あのねぇ~! 前置きもなく、他人の背後を獲らないでくれる!?」
「んん?」
こいつは誰にでもこうなんだろうか?
「近いって言ってるのよ! まったく……あ! そんなことより、あんた何で落ちてきたのよ?」
「ああ……それは」
あたしが犬でも追っ払うように右手を振ると、さすがにラヴェルも後ろへ下がり、ストローでグラスの中身を飲み干した。
「ちょっといい調子で上昇気流に乗り過ぎちゃってね、そこに別の気流がぶつかって来て……で、失速した」
「よ、良くそれで、ココまで無事でいられたわね……」
飛行船はとにかく驚くほどデリケートな乗り物だ。簡単に風に煽られて、そのバランスを持っていかれてしまう。この船はヘリウムガスだから損傷だけで済んでいるけれど、昔のように水素だったら大爆発を起こしかねなかった。
と、あたしは背中に感じた幽かな悪寒に、恐る恐る振り返った。
「ユーシィは、やっぱり何度も飛行船に乗ってるんでしょ?」
メチャメチャ近い真後ろに、片膝をチェストに乗せたラヴェルの顔があった。
「あ、あのねぇ~! 前置きもなく、他人の背後を獲らないでくれる!?」
「んん?」
こいつは誰にでもこうなんだろうか?
「近いって言ってるのよ! まったく……あ! そんなことより、あんた何で落ちてきたのよ?」
「ああ……それは」
あたしが犬でも追っ払うように右手を振ると、さすがにラヴェルも後ろへ下がり、ストローでグラスの中身を飲み干した。
「ちょっといい調子で上昇気流に乗り過ぎちゃってね、そこに別の気流がぶつかって来て……で、失速した」
「よ、良くそれで、ココまで無事でいられたわね……」
飛行船はとにかく驚くほどデリケートな乗り物だ。簡単に風に煽られて、そのバランスを持っていかれてしまう。この船はヘリウムガスだから損傷だけで済んでいるけれど、昔のように水素だったら大爆発を起こしかねなかった。