◆ラヴェンダー・ジュエルの瞳
 此処での生活を始める準備を終えた三人は、ピータンとアイガーに食事を提供し、「ツパイをお願いね」と留守番を頼んで街を目指した。もう夕方なのにまだまだ日は高い。日没は二十時なのだと聞かされて、あたしは目を丸くしながらリーチの長い二人を追い掛けた。

「まだ夕食には早いから、城壁を一周しない?」

 ラヴェルはそう誘いを掛けたけれど、タラは「先に一杯やってるわ~」と指差したカフェテラスに向かってしまった。相変わらずだなぁと困ったように笑うあいつに連れられて、城壁一周ツアーのチケット売り場に並ぶ。この街では何でもお金儲けになるのだと感心させられた。

「わぁ~綺麗!」

 入口は街の北西にあり、細い石段を登った上には人がやっとすれ違える程の小道が真っ直ぐ伸びていた。其処から反時計回りで徒歩約一時間、随分上がってきたので殆どの建物は目線の下だ。白っぽい煉瓦の外壁にオレンジや赤茶色の瓦屋根が映える。街の中はそんな雰囲気のある家屋や店や教会がひしめき、自分の立つ城壁の外を望めば、木立の繁る公園や土産店、その左手に砂浜の海岸が見えて、其処からずっと藍色の海が広がっていた。

「もういい時間なのに人が減らないわね」

 ビーチでもまだ子供達が泳いでいる。自分の周りにも同じように景色を堪能する家族連れが散策しているし、噴水横のアイスクリーム屋は依然長蛇の列だ。

「この辺りは日中結構暑いみたいだからね。これくらいの時間の方が活動しやすいんだよ」

 確かに。あのまま物件巡りが続いたら、あたしは暑さで倒れるかと思ったわ。


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