◆ラヴェンダー・ジュエルの瞳
「普通そういうのって、手の甲とかホッペとかに、するもんなんじゃないのかしら……!」
思わず殴り掛かりそうな右腕を左手で抑えつけて、あたしは少し俯き唇を打ち震わせた。見下ろす視界は『こいつ』の纏う黒いマント──って、その時代遅れなマントは何なのよっ。
「ふふ……バレた? ほら、君の唇、魅惑的だったから」
「はぁっ!?」
み、み、み……魅惑的っ!?
「そ、そんな見えすいたお世辞言ったって、許さないんだからっ!! ……返してもらうわよ……」
「??」
相変わらずの懐っこい子犬みたいな笑みを刻んで、『そいつ』は首を傾げてみせる。うぬぅ……益々忌々しい! 絶対絶対返してもらうんだからっ!!
「麗しきお姫様に、自分は何をお返しすれば良いのかな?」
「あんたって……よっぽど他人を怒らせるのが好きなのね……!」
あたしはとうとう『そいつ』の首元を引っ掴んだ。やがて唾を飛ばしてまくし立てる。
「何をじゃないわよっ! あたしのっっ!! ファースト・キスを、よっっっ!!!」
見える清々しい翠の風景に、心からの雄叫びは辺りの全てを停止させた──。
★ ★ ★
思わず殴り掛かりそうな右腕を左手で抑えつけて、あたしは少し俯き唇を打ち震わせた。見下ろす視界は『こいつ』の纏う黒いマント──って、その時代遅れなマントは何なのよっ。
「ふふ……バレた? ほら、君の唇、魅惑的だったから」
「はぁっ!?」
み、み、み……魅惑的っ!?
「そ、そんな見えすいたお世辞言ったって、許さないんだからっ!! ……返してもらうわよ……」
「??」
相変わらずの懐っこい子犬みたいな笑みを刻んで、『そいつ』は首を傾げてみせる。うぬぅ……益々忌々しい! 絶対絶対返してもらうんだからっ!!
「麗しきお姫様に、自分は何をお返しすれば良いのかな?」
「あんたって……よっぽど他人を怒らせるのが好きなのね……!」
あたしはとうとう『そいつ』の首元を引っ掴んだ。やがて唾を飛ばしてまくし立てる。
「何をじゃないわよっ! あたしのっっ!! ファースト・キスを、よっっっ!!!」
見える清々しい翠の風景に、心からの雄叫びは辺りの全てを停止させた──。
★ ★ ★