◆ラヴェンダー・ジュエルの瞳
「あっ、おーい、ミルモ~! 飯確保出来たってよー!!」
背後の窓辺から男の子の声が反響した。
「う、うん! 今行く!!」
我に返ったように面を上げ駆け出すミルモ。あたしは慌てて声を掛ける。
「ミルモっ、あの──」
「ごめん、アタシ行けない。今行かないとご飯食べられないから」
振り返っても身体は急くようにあちらを向いたままだ。
「そう……それじゃ、また来るね。これ、良かったらアイガーが舐めちゃったお詫びに……」
「『施し』なんていらないっ!!」
差し出したドライフルーツが、振り払ったミルモの手で宙を舞った。
「パパはあんなに優しかったのに、あんな女にダマされて出ていっちゃったんだ……アタシを置いて! でもアタシはお金持ちに恵んでなんてもらわない! ちゃんと生きていくんだから……一人でも、何もなくてもっ!!」
「あ……」
ミルモの瞳には憎しみの炎が灯っていた。そんな……二人で出ていっただなんて……本当はザイーダに殺されたのに──!
「ミ、ミルモ!」
あたしの声は届かなかった。光注ぐ街の闇に、アイガーの慰める啼き声だけが響いた──。
■ツルツルピカピカの石畳
■青空市場のドライフルーツ
背後の窓辺から男の子の声が反響した。
「う、うん! 今行く!!」
我に返ったように面を上げ駆け出すミルモ。あたしは慌てて声を掛ける。
「ミルモっ、あの──」
「ごめん、アタシ行けない。今行かないとご飯食べられないから」
振り返っても身体は急くようにあちらを向いたままだ。
「そう……それじゃ、また来るね。これ、良かったらアイガーが舐めちゃったお詫びに……」
「『施し』なんていらないっ!!」
差し出したドライフルーツが、振り払ったミルモの手で宙を舞った。
「パパはあんなに優しかったのに、あんな女にダマされて出ていっちゃったんだ……アタシを置いて! でもアタシはお金持ちに恵んでなんてもらわない! ちゃんと生きていくんだから……一人でも、何もなくてもっ!!」
「あ……」
ミルモの瞳には憎しみの炎が灯っていた。そんな……二人で出ていっただなんて……本当はザイーダに殺されたのに──!
「ミ、ミルモ!」
あたしの声は届かなかった。光注ぐ街の闇に、アイガーの慰める啼き声だけが響いた──。
■ツルツルピカピカの石畳
■青空市場のドライフルーツ