◆ラヴェンダー・ジュエルの瞳
[61]誘導
翌朝。あたしは大きく深呼吸をした。昨日のリベンジを果たしたい! 今日こそはミルモと心繋がりたい!! どうしたら出来るのかなんて全く分からないけれど、とにかくやってみるのみだ。エントランスの扉を勢い良く開いて、刺すような太陽光にも負けず外へ出た。
「行くよ! アイガー!!」
後ろに続くアイガーですら、たじろぐ程の大声を上げていた。ちょっと力み過ぎただろうか? あたしはもう一度深呼吸をして、そっとアイガーの頭を撫で、「ごめん」と笑い駆け出した。
引っ張られるようにして走り始めたアイガーが、途端一気にあたしを追い越してゆく。さすがは牧羊犬だ。下り坂であることも手伝って、見る見る内に白黒の身体は点になった。
「ア、アイガー~速いって~~」
北西の砦で待っていてくれたアイガーは、あたしが追いついたのを認めて再び走り出した。まさかミルモの許まで走っていくつもりなの!?
「ふぁっ……つ、辛い……」
それでも結局最後まで、アイガーを追い掛け走り抜いてしまった。中庭の手前で膝に両手を突き、肩で息をして整えている間に、頭の向こうから人の気配を感じた。
「ねぇ……アタシになんか用があるの?」
「へぇ?」
まだ息が上がったままのあたしは、つい変な返事をしてしまった。視界に小さな汚れた靴先が入り、見上げれば昨日と同じ、アイガーにじゃれつかれる不機嫌そうなミルモが居た。
「ご、ごめんね……アイガー、ミルモのこと……本当に気に入っちゃったみたいで……あー疲れたっ」
何とか起こした身で息切らし答えた。
「ふーん。変な犬と変な飼い主ね。あっちに水飲み場があるから少し飲めば? アイガー、一緒に行こ」
「あ……」
ミルモがアイガーの名前を呼んでくれた!
あたしは慌てて一人と一匹の後を追った。
「行くよ! アイガー!!」
後ろに続くアイガーですら、たじろぐ程の大声を上げていた。ちょっと力み過ぎただろうか? あたしはもう一度深呼吸をして、そっとアイガーの頭を撫で、「ごめん」と笑い駆け出した。
引っ張られるようにして走り始めたアイガーが、途端一気にあたしを追い越してゆく。さすがは牧羊犬だ。下り坂であることも手伝って、見る見る内に白黒の身体は点になった。
「ア、アイガー~速いって~~」
北西の砦で待っていてくれたアイガーは、あたしが追いついたのを認めて再び走り出した。まさかミルモの許まで走っていくつもりなの!?
「ふぁっ……つ、辛い……」
それでも結局最後まで、アイガーを追い掛け走り抜いてしまった。中庭の手前で膝に両手を突き、肩で息をして整えている間に、頭の向こうから人の気配を感じた。
「ねぇ……アタシになんか用があるの?」
「へぇ?」
まだ息が上がったままのあたしは、つい変な返事をしてしまった。視界に小さな汚れた靴先が入り、見上げれば昨日と同じ、アイガーにじゃれつかれる不機嫌そうなミルモが居た。
「ご、ごめんね……アイガー、ミルモのこと……本当に気に入っちゃったみたいで……あー疲れたっ」
何とか起こした身で息切らし答えた。
「ふーん。変な犬と変な飼い主ね。あっちに水飲み場があるから少し飲めば? アイガー、一緒に行こ」
「あ……」
ミルモがアイガーの名前を呼んでくれた!
あたしは慌てて一人と一匹の後を追った。