◆ラヴェンダー・ジュエルの瞳
背の高い噴水のような水飲み場は、上下二ヶ所から水が注いでいる。アイガーは下の出口の溜まり場から、あたしは上の出口から手で掬い、しばらく無言で飲み進めた。
「ありがとう、ミルモ」
夢中で飲み続けるアイガーの横で、その様子を穏やかに見詰めるミルモ。煉瓦の仕切りに腰掛けた小さな姿に、あたしは一息ついてお礼を言った。
「それでー? 昨日みたいに、アイガーを走らせられる場所を案内しろって? もう十分走ったみたいだけど?」
なかなか棘のある質問だけど、言葉数は明らかに多くなって、昨日程の警戒心はないように思えた。
その言葉に笑ったあたしも、アイガーを挟んで仕切りに座る。
「ううん……昨日帰りにお土産屋さんの店先で、ラヴェンダーの産地だって知ったの。まだ何とか咲いているみたいだから、一緒に行ってみないかなぁって」
特に決めていた台詞ではなかったものの、不思議と口を突いて出ていた。
「ラヴェンダー……」
ふいに曇りうな垂れるミルモの面。やっぱり……きっとお義母さんは、それで香水を作ってたんだ。
「いやっ、ラヴェンダーなんて……大っ嫌い!」
「ミルモ……」
あたしはその言葉に、あたしを含むヴェルの民全てが拒絶された気持ちがした。そしてその代表──ラヴェル。
「ありがとう、ミルモ」
夢中で飲み続けるアイガーの横で、その様子を穏やかに見詰めるミルモ。煉瓦の仕切りに腰掛けた小さな姿に、あたしは一息ついてお礼を言った。
「それでー? 昨日みたいに、アイガーを走らせられる場所を案内しろって? もう十分走ったみたいだけど?」
なかなか棘のある質問だけど、言葉数は明らかに多くなって、昨日程の警戒心はないように思えた。
その言葉に笑ったあたしも、アイガーを挟んで仕切りに座る。
「ううん……昨日帰りにお土産屋さんの店先で、ラヴェンダーの産地だって知ったの。まだ何とか咲いているみたいだから、一緒に行ってみないかなぁって」
特に決めていた台詞ではなかったものの、不思議と口を突いて出ていた。
「ラヴェンダー……」
ふいに曇りうな垂れるミルモの面。やっぱり……きっとお義母さんは、それで香水を作ってたんだ。
「いやっ、ラヴェンダーなんて……大っ嫌い!」
「ミルモ……」
あたしはその言葉に、あたしを含むヴェルの民全てが拒絶された気持ちがした。そしてその代表──ラヴェル。